りげんどうの日々

これからのご挨拶に代えて

2021年10月17日

金木犀が甘い香りで秋を誘えば、季節はたちまちに巡りはじめます。

空を見上げるといわし雲やひつじ雲が高く浮かび、清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んで良い気持ち。一日の終わりには、刻一刻と変わる夕空の見事な色彩にほうとため息がもれ、気が付くとまるでつるべ落としのようにすとんと太陽が沈みます。夜の静寂に響くこおろぎや鈴虫の音に耳を傾けていると、夜更かしもつい過ぎてしまうこの頃。昼間の暑さに支度するのを忘れてしまいますが、読書の膝元や起きぬけの首元をあたたかく包む羽織を一枚お守り代わりにたずさえておきたい時期になりました。

皆様には長らくお待たせいたしました。少しずつ、落ち着いた日々が戻りつつあり、私たちも今月より再びお店を開くことが出来ました。最近は行楽地のにぎわう様子など報じられることもありますが、緊急事態宣言下においても、その後においても、西荻窪の人出は極端に増えることも減ることもないように感じます。それは、小さな個人商店がいくつも店を構え日々試行錯誤し、この地を愛し住まう人々がいつもの暮らしを変わらずに送っている証のようにも思え、なんだか安心するのです。お休みをいただいていた間は、スタッフ皆で再開に向けて力を蓄えておりました。改めてここ西荻窪の地で、皆様をお迎えできることが嬉しく、お待ちいただいた方々に深く感謝いたします。お昼のお食事では新米が始まり、暮らしに寄り添い気持ちの明るくなるお洋服や小物もそろい始めました。お越しいただいた際には、心地の良い時間を過ごしていただけますように。今後ともよろしくお願いいたします。

今年も、出雲の神結び米をお届けいたします

あたらしい芽

2021年4月2日

4月は「はじまり」の時。

早咲きの桜は瞬く間に花びらを散らし、木々は萌葱色の新芽をのばし始めました。

長そででは汗ばむような日も多くなり、半そで姿で公園を駆けめぐる子どもたちも増えてきました。在宅勤務がふえたためか、真新しいスーツ姿を見かけることは少なくなり、すこしさみしいような気もします。けれどきっと、それぞれの場所で、あたらしいはじまりに胸をふくらませてこの4月を迎えた方はたくさんおられるはず。ふんわりとやわらかい春の空気には、そんな、数多くの期待がふくまれているような気がします。

りげんどうへも、あたらしい春の食材がたくさん届いています。うるいにわらび、スナップエンドウ。たけのこに若芽(わかめ)もこの時期ならではの旬の素材です。

米ぬかと鷹の爪を加えて下茹でしたたけのこは、わかめと一緒に若竹煮に。明日からのお膳の小鉢にあがります。ひとつひとつ、丹精込めてつくっています。限られた営業日数ですが、手をかけたお料理をじっくり味わっていただき、穏やかな春のひとときを過ごしていただけますように。いつもあたらしい、りげんどうでいられますよう、スタッフ皆ではたらきたいと思います。

桃の節句すぎて

2021年3月5日

桃の節句すぎ、寒さ暖かさを繰り返しながら季節巡る3月の上旬。今朝は、線路わきに咲く菜の花が春の訪れを告げていました。たんぽぽもそうですが、きいろにみどりの取り合わせを見ると、ぐっと心がはるめくのはなぜでしょう。

なかなか落ち着かない世情に、当面の間、りげんどうの週末営業は続きそうです。私たちも手さぐりながらの日々。今日は、明日からの営業に向けてキッチンでせっせと仕込みが進められています。

そら豆、新じゃが、新玉ねぎ。みずみずしい春野菜たち。新玉ねぎは、出汁でことこと煮込み甘みをじっくりと引き出します。素材ひとつだけの、シンプルなおでん。お膳に上るのがたのしみです。

先週のこと。歳若い女性のお客様が、食後に頼まれたお汁粉をみてじっとしていました。どうしたのかな、と思えば、お汁粉に入っていた金柑の甘煮を、ミニトマトと思い驚いていたとのこと。そうか、普段は食べる機会の少ない食材だなあと思い「喉にやさしいので丸ごと食べてくださいね」とお伝えすると、ほっとした様子で召し上がって下さいました。その可愛らしい様子が印象的で、季節の移ろいを感じる機会のすくない東京だからこそ、伝えていきたい食べ物の旬のよろこびがあるなと改めて感じたのでした。